【案内人ブログ】No.14(2018年5月) 

三浦綾子記念文学館 常設展示 リニューアルオープン

三浦綾子記念文学館(以下、「文学館」という)がオープンしたのは1998年(平成10年)6月13日、綾子さんが亡くなる1年4ヶ月前でした。『氷点』の舞台となった外国樹種見本林が開設されて100年という、大きな節目の年でもありました。国有林の中に建物を創ることは、想像を超えた大変なご苦労があったものと思われます。爾来20年、2018年(平成30年)4月6日、文学館1階常設展示がリニューアルオープンしました。開館10周年に一度リニューアルしたと聞いていますので、今般二度目のリニューアルとなりました。総じて、広く明るくなった感じがいたします。入館者の反応も上々です。

1階のテーマは「触れる」、2階のテーマは「開く」です。9月に建つ分館のテーマは「感じる」です。また、今回のリニューアルは五感展示が特徴的で、触れたり、取り出したり、聞いたりできる仕掛けが施されています。これらの試みは斬新でユニーク、入館者は思わず展示に引き込まれることでしょう。では、順を追って館内を巡ることとします。

第1展示室

綾子さんの人生が一目でわかるように、「知恵の木」をグラフィック化してさまざまな出来事が掲出されています。所々に丸い穴が開いており、そこから写真アルバムや「井伊大老について」の作文コピー、交流誌「いちじく」、『氷点』入選発表記事が顔を覗かせています。せっかくの機会ですから、ぜひ手に取ってご覧いただきたいと思います。

第2展示室

綾子さんの作家活動を4期に分けて、パネルで紹介されています。「Ⅰ 作家・三浦綾子の出発期」、「Ⅱ 歴史上の人物を描く」、「Ⅲ 病と闘いながら」、「Ⅳ 綾子の遺言」となっており、それぞれに解説が加えられています。

代表作『氷点』『塩狩峠』『母』、そして集大成と言われている『銃口』。これらは三浦綾子文学ファン必読の書であります。また、向かい側の壁には執筆時や取材時の様子がプロジェクターで放映されています。

第3展示室

稀代のストーリーテラーと呼ばれた綾子さんの名言や名セリフが種々吊り下げられており、手に触れて読み親しむことができます。これはほんの一部であって、適時新しいものと交換されます。また、綾子さん・光世さんへの一言メッセージを書いもらい、それをボードに貼りつけて一定期間公開、年2回大賞を発表するコンテストがあります。皆様こぞって応募してください。

第4展示室

テーマ「生きるをつなぐ」と題して、小説『泥流地帯』『続泥流地帯』の特別展示を開催しています。パネルには小説のあらすじや登場人物、開拓者の暮らし、苦難・復興の姿が描かれています。展示ケースには小説の下書き原稿や取材ノート、関連資料等々が所狭しと並べられています。また、NPO法人「環境ボランティア野山人」提供による土層見本もしっかりと展示されています。

1926年(大正15年)十勝岳の大正噴火から92年、地元上富良野町では『泥流地帯』の映画化に積極的に取り組んでいます。これが実現すると、昨年の『母』に続く北海道発の劇場公開映画となります。皆さんと応援していきたいと思います。

第5展示室

ここは従来と同じですが、彫刻家佐藤忠良作の綾子さん顔像が壁面の献辞コーナーの手前に移設されました。「愛は忍ぶ」という綾子さんが書いた色紙も展示ケース中央に収まっています。ちなみに、映画『塩狩峠』に出演したふじ子役の佐藤オリエさんは彫刻家佐藤忠良さんの長女です。受難現場で線路にガバと打ち伏したふじ子の姿がありありと想い出されます。

……塩狩峠は、雲ひとつない明るい真昼だった。

視聴覚室・図書室

こちらでは映像化された作品や綾子さんの出演番組など100本以上の映像を2台のモニターで自由に見ることができます。したがって、館内の滞在時間が長引くことは必至です。お疲れの際には、1階の喫茶コーナーで一服なさるのも妙案でしょう。また、天気がよければ見本林散策をおすすめします。時間に余裕を持っておいでください。

以上で館内の様子をかいつまんでお知らせしました。9月末には文学館の隣に分館がオープンいたします。書斎の移転・復元がメインです。

なお、開館20周年を記念し今般エッセイ集『一日の苦労は、その日だけで十分です』及び『信じ合う 支え合う 三浦綾子・光世エッセイ集』が新規出版されました。併せてご了知ください。三浦文学案内人一同、皆様のご来館をお待ちしております。どうぞお気軽にお声を掛けてください。

by 三浦文学案内人 森敏雄

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