7月7~9日、当文学館主催・北海道新聞旭川支社共催の「第3回平和を願うつどい」が開催され、多くの方々にお越しいただきました。感謝申し上げます。私は7月9日、酒井聡平さんの『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』文庫化(講談社文庫)記念講演会に参加しました。 https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000426091
酒井聡平さんは、1976年、札幌市生まれ。現在は北海道新聞静内支局長で、土日は戦争などの歴史を取材して発信する「旧聞記者」として長く活動されています。
2023年刊行の『硫黄島上陸』は話題を集め、ノンフィクションのジャンルとしては異例の「15刷」を達成、第11回山本美香記念国際ジャーナリスト賞も受賞されました。
話題を集めた映画『硫黄島(じま)からの手紙』(クリント・イーストウッド監督)の日本公開は、2006年のこと。その公開20年の節目にあたる2026年に『硫黄島上陸』が文庫化されたわけですが、さて、私たちは、どれだけ硫黄島について知っているのでしょうか──?
2万人の兵士のうち1万人が行方不明という、太平洋戦争の激戦地だった硫黄島。米国側では戦勝の記憶・象徴空間とされていますが、日本の民間人の上陸は今も原則禁止され、自衛隊の管理下におかれています。島民1千人とその子孫はいまだに帰郷できず、その帰島困難の理由と真相が、一次資料を用いて明るみにされています。
酒井さんは私たちに、「戦争被害受忍論」を理解しよう、と呼び掛けます。戦争という非常事態での被害は国民がひとしく我慢するべきだ、という考えが「受忍論」です。けれども、そうすると国家に賠償を求めることもできず、理不尽さを抱えたままあらゆる問題が風化へとミスリードされてしまいます。
受忍論そして戦後未処理問題をひしひしと実感させるのが、硫黄島の存在でしょうか。太平洋戦争下だけの話ではなく、この2026年もずっと地続きであり、私たちもなお戦争当時者であることを覚醒させる存在でもあるのです。
「忘れてはいけないことは/決して忘れてはいけない」
髙木いさを氏の詩「8月6日」冒頭の一節を、酒井さんは講演会の配布資料にゴシック体で引用しておられました。
私事ながら、2024年4月に北海道新聞社の動画配信講座「激戦地 硫黄島─話題作『硫黄島上陸』著者が解説─」を受講した際、講師である酒井さんの情報公開の大量さにひじょうに驚かされた(かつ、感銘を受けた)ことを鮮明に記憶しています。
たとえば、2019年12月に配信され、176万回以上も再生されているどうしん動画ニュース「<残された戦後 記者が見た硫黄島>番外編 激戦、生活の跡 今も」

文庫版では、新たに「文庫版あとがき」と、毎日新聞専門記者・栗原俊雄氏による解説も収められています。若い世代にも読みやすい一人称語りの主語「僕」、そして読者に語り掛けながら次へ次へとうながしていく文体は、村上春樹の初期作品群と共通していると「文庫版あとがき」で明かされ、なるほどと膝を打ちました。
この夏、続く『死なないと、帰れない島』(講談社、2025年)も、ぜひ併せてお読みください。
