札幌座による公演「ひつじが丘」(原作:三浦綾子 脚本・演出・音楽:斎藤歩)が、2023年3月9日~12日にかでるホール(札幌)で行われました。原作での印象的なセリフがすべて活かされ、多くの観客の拍手に包まれた舞台でした。
不寛容な話題の続く昨今なだけに、『ひつじが丘』がもたらす問いかけ、メッセージは、今こそしみいるものがあるのかもしれません。
その流れ~というわけではありませんが、近年、俳優さんの愛読書として『ひつじが丘』が選ばれており、注目しているところです。
まずはお一人目は、札幌市出身の俳優・藤原季節さん。映画『佐々木、イン、マイマイン』(内山拓也監督、2020年)の主演や、多くのテレビドラマ、舞台で活躍している藤原さん。2021年7月19日に、ELLEgirlというWEBサイトに公開された「読書男子vol.2」という記事の中で、「ぼくの人生を変えた本」として6冊の本が紹介されています。村上春樹『海辺のカフカ』などに続けて、4冊目に紹介されたのが、三浦綾子の『ひつじが丘』でした。
「登場する5人の恋愛模様が壮絶! 愛と許しを深く描いているところが好きです。難しいことだけど、自分も人を許して生きていきたいと思っているので、人を愛するってどういうことだろう?ってすごく考えさせられる。実は、映画化したら出演したいとずっと思っている本でもあります」。
https://www.ellegirl.jp/ By Naomi Yumiyama 2021/07/19
物語では美しい牧師の娘をめぐり、誠実な年上の教師とだらしないが魅力的な新聞記者が登場する。「役者としてどちらかを選ぶなら?どっちもやりたいです(笑)」
札幌座の舞台でも、「誠実な年上の教師」、「魅力的な新聞記者」それぞれ存在感ある若手男優が演じ分けていましたが、「どっちもやりたい」とは、まさに役者魂でしょうか。
お二人目は、テレビドラマや映画、CMなどでファンの多い女優の吉田羊さん。エッセイ集『ヒツジメシ』(講談社、2022年)など、“ひつじ”とのご縁も多いようですが、三浦綾子の『ひつじが丘』を愛読書の筆頭に挙げてくださっています。以下、『ダ・ヴィンチ』のサイトより一部を引用します。
──吉田さんの「愛読書」について教えてください。
吉田羊さん(以下、吉田):「愛読書」と聞いて思い浮かべるのは、三浦綾子さんの小説『ひつじが丘』(講談社文庫)です。10年以上前、劇団をやっていた頃の相方が非常に読書家で、いつもわたしに本を勧めてくれていて。わたしが好きそうなタイプの本を選んでくれるんですけど、そのなかのひとつが『ひつじが丘』でした。
──この作品のどんなところがお好きですか?
吉田:「人をゆるすことの難しさ」に苦しんでいる主人公が、でも自分もまたゆるされて生きていることに気づく、そんな長く苦しい道のりが一歩ずつ描かれている小説なんです。主人公の呼吸を感じながら読み進めていくと、いつの間にか自分と主人公が一体化していて、苦しみを感じながらも最後の救いに触れられます。そんな読書体験を得られるところが大好きなんです。
ダ・ヴィンチ 2023年1月6日公開 https://ddnavi.com/serial/1071065/a/
汚い自分をゆるし、生かしてくれる。吉田羊を救い、支える一冊とは【私の愛読書】
さまざまな悩みを抱える中で、読書によってゆるされ、生かされるという読後感を大切にしてくださっているのですね。
繰り返し読みたくなる、そんな存在である『ひつじが丘』。迷える子羊たちの顔を、少しだけ上げさせる言葉の数々が、やはり魅力なのでしょう。