【館長ブログ「綾歌」】日本は、戦後80年

「綾歌」館長ブログ

新年度の話題としては少々穏やかならぬものかもしれませんが……厚生労働省が発表している、年齢ごとの「死因順位」データがあります。2023(令和5)年の表で20代の「死亡数・死亡率(人口10万対)」の数値を見てみると、このようになっていました。

  • 20~24歳=自殺  1,194人:20.7%、不慮の事故 259人:4.5%、悪性新生物〈腫瘍〉 167人:2.9%
  • 25~29歳=自殺 1,208人:20.3%、悪性新生物〈腫瘍〉 223人:3.8%、不慮の事故203人:3.4%

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/h7.pdf

30代では、第3位に「心疾患」が入りますが、1位と2位は「自殺」「悪性新生物〈腫瘍〉」で変わりありません。

若い世代がみずから旅立ってしまうことには言葉を失うばかりですが、80年前を振り返ると――若い世代の死因第1位は、圧倒的に「戦死」でした。

大正生まれの男子は総数で1340万人だったというのである。このうちのおよその戦死者は200万人であったという。なんのことはない、満州事変、日中戦争、そして太平洋戦争の軍人、軍属の戦死は230万人と言われているのだが、実にその87%は大正生まれが占めている。

保阪正康『世代の昭和史 「戦争要員世代」と「少国民世代」からの告発』(毎日新聞出版、2022年)

大正生まれの男性は、7人に1人が戦争にかかわって命を失っていたのです。そのような時代に対する関心、想像力を、鈍らせてはならないとあらためて感じます。

 

「戦後80年」とは言うものの、それはこの日本のみのもの。ウクライナやロシアでは、今この瞬間にも若い世代が戦死者として数えられているのでしょう。

ウクライナでは、これまでに子ども650人を含む12,600人の民間人が死亡し、29,000人以上が負傷したと発表されています(国連発表、2025年2月22日)。

また、ロシア側の戦死者も想像以上の人数だそうです。毎日新聞2025年3月22日付によると、イギリスの国防省が3月20日、ウクライナ侵攻にかかわるロシアの戦死者数を発表。「2022年の開始以降の露軍の戦死者数は20万~25万人」、「死傷者全体では約90万人」で、第二次世界大戦以降ロシア「最大の人的損失」ということです。 戦死者や戦傷者という言葉が、この世の辞書からなくなる日――遠い遠い目標であっても、それを目指していく努力はおろそかにしてはいけないものでしょう。

田中綾

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