【館長ブログ「綾歌」】新聞記事を活用して小説を創作──NIE実践企画

「綾歌」館長ブログ

三浦綾子の『氷点』は新聞連載小説でしたが、近年は、新聞を教材として、さまざまに活用する学校も増えてきました。
「NIE=(Newspaper in Education=エヌ・アイ・イー)」は、教育に新聞を活用する活動です。1930年代にアメリカで始まり、日本では、1985年に静岡で開かれた新聞大会で提唱されたということです(公式HP https://nie.jp )。
主に小中高の社会科などで実践されていますが、私も勤務する大学のゼミ(演習)で、2021年から「新聞記事を活用して、短編小説を創作」することを実践しています。

今回は「学生の内心 のぞく企業」(北海道新聞朝刊2023年5月2日(火)付)はじめ6つの記事を選び、今年初めて、日々掲載されている「首相動静」も加えてみました。
「〇時〇分、★★と面会」などと伝えられる「首相動静」は、1970年代から各紙で掲載が始まったそうですが、私も毎日目を通している記事の1つです。新聞になじみのない学生にとっては、まず、首相の行動が分単位で記録されている点が驚きだったようです。
各社数人の「総理番」が張り付き、官邸や会食先で取材を続けて記事に――公人・要人は常に監視されているのか(!?)、と驚く学生たち。とはいえ、総理官邸には複数の出入り口があり、さらにさまざまな面会方法もあり、現実にはすべての動きが把握されているわけではないそうです。
そのことも踏まえ、創作された短編小説の内容は~

・実はこの「空白」の時間にこういう人と面談していた。
・「首相動静」の記事自体が語り手になって、その意義を読者に語り掛けていく。
・全世界が終末を迎えるが、淡々と動静記事だけは掲載され、そして――。
・「首相動静」ならぬ「美伽子動静(小学生女子)」として分刻みの行動が報告される。
・総理番記者だけではなく、「公人監視インプラント」によってその動静が記録されていたことが明かされた(!)。
・公人監視システム自体が監視されており、さらにそれを監視する上位システムがあり……(無限ループ状態)。

等々、想像力を駆使したユニークな小説が生まれました。
新聞も首相も、最近の学生たちにとっては遠い存在のようですが、主権者教育にもなりうるので、今後も動静記事を教育に活かしていきたいと思います。

田中綾

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