歌われた〈三浦綾子記念文学館〉

「綾歌」館長ブログ

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、昨年末から臨時休館しておりましたが、おかげさまで、4月1日から無事に展示等を再開しております。
休館中は、収蔵資料の確認などもして、あらためて〈文学館〉という場について考える時間をいただきました。
さて、実は〈文学館〉、そして〈三浦綾子記念文学館〉は、歌語でもあります。現代の歌人たちの作品に登場していますので、今回は、札幌市在住の阿知良光治(あちら・みつはる)さんの歌集をご紹介しましょう。

阿知良光治さんは、1944(昭和19)年、中国東北部の吉林省に生まれ、戦後、家族で札幌市に引き揚げてこられたそうです。北海道教育大学岩見沢分校に入学後、歌誌「アララギ」「北海道アララギ」に入会し、長く作歌を続けておられます。「アララギ」は1997年に終刊となりましたが、翌年、「新アララギ」が創刊され、入会。「アララギ」時代から、三浦光世とは“歌友”ということになるでしょうか。

第1歌集『航跡』(木犀社、2006年)巻末の年譜によると、札幌市内の小学校の教員、教頭、校長を歴任。2005年に定年退職され、現在は「北海道アララギ」発行人をつとめておられます。

さて、阿知良さんの第2歌集『寂寥の街』(旭図書刊行センター、2019年)は、第34回北海道新聞短歌賞の佳作受賞歌集ですが、その中に、三浦綾子に関する連作がありました。

・三浦綾子逝きて十年記念展に圧倒さるるその存在感
・病むほどにペンが冴えるか『泥流地帯』膨大な原稿の前に佇む
・遺作となりし『銃口』に見る教師像懺悔のこころをペンに託しぬ
・吾が胸にいまだ解けざる無償の愛『塩狩峠』を読みて暁 (以上、p94、95)

・秋の日のなかにひつそりと建ちてあり三浦綾子記念文学館は
・三浦綾子の唯一の歌集『いとしい時間』書架のなかに控へめにあり
・ウッドチップ敷き詰められし見本林妻伴へば秋がにほへり
・どこまでも続く美瑛川の堤防を少し汗ばみ妻の付き来る
・ストローブマツに絡まるツタの葉は色づき早しこの見本林に (以上、p109、110)

三浦作品の読後感に加え、秋の色づく見本林と文学館の展示、そして何より、「妻」との愛すべき時間を過ごされたことが伝わってきます。

歌われた〈三浦綾子記念文学館〉――ほかにも、さまざまな歌集で“発見”できましたので、折々紹介していきたいと思います。
また、みなさまも、「こんな歌がありましたよ!」などの情報をどうぞお寄せください。

田中 綾

追伸:当文学館WEBショップでは、かわいいデザインの「氷点の森のリス(びっくり!)」「氷点の森のリス(カレッジ)」グッズなど、新製品がお目見えしています~びっくりリスちゃんのスマホケース、目下の私のお気に入りでもあります。
https://suzuri.jp/hyouten

タイトルとURLをコピーしました