【館長ブログ「綾歌」】1964年ごろの作家たちの「原稿料」事情

「綾歌」館長ブログ

新米の秋、新蕎麦の秋。この時期は、ついつい財布のひもが緩んでしまいがちですが、家計簿を見てムンクの『叫び』の表情に――。昨年度に比べ、確実に食費、光熱費が上がっているのですね。

世知辛い世の中だなあ……と嘆じつつ、あらためて、『氷点』が入選した朝日新聞一千万円懸賞小説の「一千万円」という賞金の額に感じ入ってしまいました。

書棚の奥にあった、浅井清・市古夏生監修、作家の原稿料刊行会編著『作家の原稿料』(八木書店、2015年)というズシリと重い一冊をひもといてみました。近世から明治大正、そして1974(昭和49)年まで、作家や編集者、出版社が書き残した報酬を抜き書き、分析した研究書です。稿料などを、日記にまめにメモする作家たちもいたということもわかりました。

では、『氷点』入選の1964(昭和39)年ごろ、作家たちの原稿料、印税はどんな感じだったのでしょう。

【1964(昭和39)年】

3月 澤地久枝、五味川純平の助手となる。三一書房経由で、月給3万円。これは徐々にあがった。6月と12月にボーナスもあった。           [家計簿]

6月27日 高見順作「いやな感じ」の映画化の原作料として東宝より100万円の内、手付金として30万円(税引き27万円)を渡される。       [続高見日記03]

9月25日 吉村昭の『孤独な噴水』が講談社より刊行された。定価450円、初版5,000部、印税12%だった。(田中注・27万円)            [文学漂流]

【1965(昭和40)年】

7月19日 津村節子が「玩具」で第53回芥川賞を受賞。賞金は10万円。後日、高額な賞金を期待した銀行の支店長が預金勧誘に訪れる。        [文学漂流]

9月 高木彬光『ゼロの蜜月』によれば、定価300円の新書判『I・Eの知識』を初版8,000部で出版すると、印税は税金を引いて22万円となる。      [ゼロの蜜月]

9月 昭和46年1月まで連載された三島由紀夫『豊饒の海』シリーズ約3,000枚の「新潮」原稿料は400字1枚1,500円で計450万円。        [三島由紀夫伝]

『作家の原稿料』p409~410

三島由紀夫の『豊饒の海』シリーズの原稿料が「450万円」とありますが、『氷点』の賞金のうち、まさに「450万円」が税金であったと言われています。やはり、当時の「一千万円」は破格の高額だったことがうかがえるでしょうか。  ケタ違いの金額はさておき、せめて、新米くらいはお財布を気にせず味わいたいですね。当館でも「新米セット2023」を用意し、私もさっそく取り寄せました。北海道を代表する品種「ゆめぴりか」5kgと、「とうもろこしごはんの素」や「米粉」など、ぜひお楽しみください。https://www.hyouten.net/?pid=177107864

(2023.12.7更新)
2023年11月末で「文学館 2023新米セット」の販売は終了いたしました。
MF-027 ゆめぴりか 白米5kg(舟山農産)のみの販売は続けております。
「文学館 2023新米セット」お求めをご検討されていたお客様にはご迷惑をおかけしますことを、お詫び申し上げます。
お問い合わせは三浦綾子記念文学館までお願いいたします。

(2023.10.29更新)
※受注を再開いたしました。
上記リンクをクリックすると商品ページに移動します。
※ただいま、農家さんの事情により、受注をストップしております。再開までしばらくお待ちください。

田中綾

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