三浦綾子の小説を、AIが解析!?

人工知能(AI)が、俳句を自動的に作る! AI俳句「一茶くん」プロジェクトはご存じでしょうか。

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俳句や短歌、さらにはSF短編などをAIが自動で「出力」する試みは、実は、ずいぶん前から取り組まれています。しかも、小説をテキストデータとみなして解析するというツールも公開されています。

その中の1つ、株式会社ユーザーローカルによる「AIテキストマイニング」。無料版は、インターネットでアクセスでき、誰でも使用することができます。

AIテキストマイニング by ユーザーローカル
無料から利用できるテキストマイニングツールです。 アンケートの自由記述やクチコミを自然言語処理し、頻出語や特徴語を抽出できます。 音声認識技術による文字起こしで会議の議事録をまとめることも可能。 業務で使える商用版も用意。

検索するとすぐに「解析したいテキストを入力する」ページが現れるので、そこに、たとえば三浦綾子の『泥流地帯』の文章の一部を入力してみましょう。
図・1のように、「ワードクラウド」の提示や、「共起キーワード」の図示、加えて単語の色分けや、出現傾向の似た単語の樹形図も示してくれます。

文学研究として興味深いのは、「単語出現頻度」(図・2)ですね。使用された名詞と動詞、さらに形容詞と感動詞も分類して可視化してくれるので、その小説の語彙の特徴や、作家の文体研究の手がかりにもなりそうです。

今回の入力箇所は、大音響が迫るあの「山津波」のシーンなので、「向う」「流れる」「逃げる」「呑みこむ」など、「動詞」が多く使われていることがわかります。

もちろんこの無料版には限界があるのですが、読書会などでの話題づくり、また、小説を通したコミュニケーションの糸口として、興味深いツールと感じています。
ご自分の文章も解析できますので、一度、試してみてはいかがでしょう。

田中 綾

※今回、解析した文章は、三浦綾子『泥流地帯』「轟音」のこちらの部分です(新潮文庫、52刷より。675文字)。

拓一と耕作の目が恐怖におののいた。
「じっちゃーん! 山津波だあーっ! 早く山さ逃げれーっ!」
 二人の足ががくがくとふるえた。
「何いーっ!? 山津波―っ?」
「早く早く、早く逃げれーっ!」
 二人は声を限りに絶叫する。市三郎が家に向って何か叫び、キワと良子がころげるように飛び出して来た。三人が山に向って走り出す。それがもどかしいほどに遅く見える。
「ばっちゃーん、がんばれーっ!」
「良子―っ、早く早くうーっ!」
大音響が迫る。市三郎たち三人がようやく山道に辿りつく。ハッと吾に帰って、拓一と耕作が山道を駆け出す。が、山津波の襲来は早かった。
「ドドーン」
「ドドーン」
 大音響を山にこだましながら、見る間に山津波は眼下に押し迫り、三人の姿を呑みこんだ。
 拓一と耕作は呆然と突っ立った。丈余の泥流が、釜の中の湯のように沸(たぎ)り、躍り、狂い、山裾の木を根こそぎ抉(えぐ)る。バリバリと音を立てて、木々が次々に濁流の中に落ちこんでいく。樹皮も枝も剥がし取られた何百何千の木が、とんぼ返りを打って上から流されてくる。
と、瞬時に泥流は二丈三丈とせり上って山合を埋め尽くす。家が流れる。馬が流れる。鶏が流れる。人が浮き沈む。
「ばっちゃーん! じっちゃーん! 良子ーっ!」
二人の声が凄まじい轟音にかき消される。拓一がふり返りながら、合羽を脱いだ。
「耕作、おれ助けに行くっ!」
「危ないっ! 兄ちゃん、駄目だっ! 兄ちゃんが死ぬっ!」
「死んでもいいっ! 耕作、お前は母ちゃんに孝行せっ!」
言ったかと思うと、拓一は泥流に向って駆け降りた。

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