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【館長ブログ「綾歌」】頌春 書評紙「図書新聞」に感謝をこめて

「綾歌」館長ブログ

新年のご挨拶を申し上げます。
新たな1年に心も躍りますが、その一方で惜しまれるニュースも……週刊書評紙「図書新聞」が、この3月に終刊するという記事に思わず言葉を失いました。

「図書新聞」は1949年創刊、とくに人文・思想書、芸術書を多く取り上げ、書評やインタビューなどたいへん充実した紙面でした。

拙著もご高評いただき、

  • 『非国民文学論』(青弓社) 評者:内藤千珠子さん 3451号
  • 『書棚から歌を――二〇一五―二〇二〇』(北海学園大学出版会) 評者:東直子さん 3529号

たいへん励みになったことは、ほかの研究者・著者の方々も同じ思いでしょう。

また、2023年からは、上半期・下半期のベスト3冊を挙げる「読書アンケート」担当の一人として貴重な場をお借りしてきました。最後となる「図書新聞」2025年12月20日号(3716号)の【2025年下半期読書アンケート】拙稿を引用いたします(田中綾 日本近現代文学)。

酒井聡平『死なないと、帰れない島』(講談社)

山本美香記念国際ジャーナリスト賞受賞作『硫黄島上陸』に次ぐ二作目。米国の戦勝の記憶・象徴空間とされ、かつ自衛隊の管理下におかれている硫黄島。島民の帰島困難の理由と真相を、一次資料を用いて明るみにする。ミステリー小説ふうに進行するナレーションが、読者自身も戦争の当事者であることを鋭く指摘する。

藤原辰史『食権力の現代史 ナチス「飢餓計画」とその水脈』(人文書院)

ほぼ書き下ろしで、「飢餓」という、「しない」「させない」ことで起こる暴力を白日に晒す覚醒の書。イスラエルはじめ、ナチス崩壊後もなお繰り返されている飢餓という暴力に着目し、現代史の語り方そのものの再考を迫る。

辻智子・水溜真由美編著『労働をめぐるシスターフッド――プロレタリア文学・フェミニズム・労働研究』(北海道大学出版会)

話題の「シスターフッド」を軸に、桟敷よし子、佐多稲子、松田解子らを論じた八編。「文学」「運動」「研究」の三点から、女性労働における連帯を考察した旬の論集。

振り返れば、短歌に関わる論集や歌書などの書評も執筆させていただいていました。ここ10年ほどの書評を担当したタイトルを、記念に挙げておきたいと思います。いずれも短歌史的に貴重な内容で、ご指名くださった編集の方々にこの場を借りて感謝申し上げます。

  • 大口玲子歌集『自由』(書肆侃侃房) 3500号
  • 島内景二『和歌の黄昏 短歌の夜明け』(花鳥社) 3430号
  • 松澤俊二『「よむ」ことの近代――和歌・短歌の政治学』(青弓社) 3206号
  • 内野光子『天皇の短歌は何を語るのか――現代短歌と天皇制』(御茶の水書房) 3133号
  • 阿木津英『方代を読む』(現代短歌社) 3098号
  • 古谷鏡子『命ひとつが自由にて――歌人・川上小夜子の生涯』(影書房) 3067号

末筆ながら、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

田中綾

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