テレビドラマ『羽音』

短篇小説『羽音』

短編集『病めるときも』に収録されている、『羽音』という小説を覚えていらっしゃるでしょうか。1969年に『小説女性』に掲載された、家庭と愛をめぐる短編です。(三浦綾子記念文学館公式サイト『羽音』はじめの一歩 https://www.hyouten.com/hajimeno-ippo/08_haoto

『羽音』は、『病めるときも』(角川文庫)に収録

舞台は、札幌市南区の真駒内(まこまない)。東京から転勤してきた男性・堀川と、その同僚の女性との揺れ動く心が描かれています。

破格の昇進で、経理課長として札幌に着任した堀川ですが、妻は東京の生活に固執し、札幌での同居をいやがります。男児にも恵まれ、はた目からは申し分ない家庭ですが、夫婦仲はぎくしゃく。結局堀川は、“札チョン族”の単身生活となり、しだいに、同僚の若い律子に心が惹かれていきます。

母親と二人暮らしの律子は、真面目で慎重で、堀川と二人きりになっても一定の距離を保ち続けています。堀川は、そんな節度ある律子の姿勢にますます魅力を感じていくのですが――。

この短編は、発表後まもない1969年の「東芝日曜劇場」で、早々にテレビドラマ化されました(脚本・砂田量爾、演出・守分寿男、HBC制作、12月14日放映)。倉本聰さんらが活躍され、ドラマ全盛期を担った番組なので、なつかしく思われる方も多いのではないでしょうか。

田村高廣さんが堀川を演じ、律子役は、大空真弓さん。律子の母は杉村春子さんが演じ、生け花など存在感たっぷりの演技を見せています。

ドラマの設定やセリフは、実は原作に加味された部分も多いのですが、冬季オリンピック(1972年)開催前の札幌の風景を追体験できます。

その制作について、当時演出助手をつとめられた長沼修さんが、ご芳著『北のドラマづくり半世紀』(北海道新聞社、2015年)の中で思い出を書いておられます。撮影には、原作者である三浦綾子も立ち会い、長沼さんはとても緊張しておられたとか……。

さて、ちょうど3月18日(木)7:00~「日本映画専門チャンネル」で、この『羽音』が放映されるそうです。どうぞ、しみじみとご覧ください。https://www.nihon-eiga.com/program/detail/nh10009324_0001.html

田中 綾

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