【資料紹介】国立国会図書館デジタルコレクションで「十勝岳爆発災害志」がお読みになれます

 今月の館長ブログ「綾歌」(『泥流地帯』映画化、こんなキャスティングはいかがでしょう?)はもうお読みになられましたか? 
 田中綾館長の勤務先の大学生たちが選んだキャスティングをイメージしながら楽しく読みました。果たして誰が石村兄弟や福子、節子を演じるのか? 公式発表が待ち遠しいこの頃です。
 さて、動画にあったとおり、「十勝岳爆発災害志」(十勝岳爆発罹災救済会編、昭和4年)が国立国会図書館デジタルコレクションでお読みになれます。
 「十勝岳爆発災害志」はひかりと愛といのち』所収の「人間の苦難」にあるように、綾子が『泥流地帯』を執筆する際に資料として読んだものです。興味がおありでしたら小説と共にぜひお読みください。

「十勝岳爆発災害志」 ( 国立国会図書館デジタルコレクション)

十勝岳爆発罹災救済会 編
十勝岳爆発罹災救済会, 昭和4
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1242387

人間の苦難『ひかりと愛といのち』(岩波書店)所収

電子書籍でお読みになれます。

 『ひかりと愛といのち』所収の「人間の苦難」で、綾子は『泥流地帯』の創作秘話を記しています。北海道新聞社から日曜版に連載小説を依頼された際、綾子は光世からの提案を受けて執筆を決意しますが「十勝岳大爆発の悲惨さについては、私は詳しくは知らなかった。しかし、物を書く者として、近在にあったこの惨事を書くべき義務があるのではないかと、私は思」い、小説の資料を読み、取材を進めていったのです。

 さっそく『十勝岳爆発災害志』を読んだ。そこには、泥流に全滅した一家の話や、体が真っ二つにちぎれた硫黄鉱山の炊事婦のことなど、悲惨な事実が数々記録されてあった。
 その後、現地を訪れ、肉親を失った人びとにも会った。そして、災害の様子を詳しく知れば知るほど、私の心は重くなった。
 小説には、娘を売った酒乱の父親が出てくるが、現実にはそんな人間は一人もいなかった。誰もが、ひたすらまじめに、勤勉に、田畑を耕した人びとばかりであった。開拓して三十年、ようやく一息つこうというころに、突如、思いもかけぬ災害に出会ったのである。被災者の方がたの話を聞きながら、私の胸にあった、永遠のテーマともいえる「人間の苦難」が次第に受肉していった。

三浦綾子「人間の苦難」(『泥流地帯』書き終えて)「北海道新聞」1976年9月16日
「人間の苦難」 (『ひかりと愛といのち』岩波書店(1998年12月)所収より引用

小学館三浦綾子電子全集「ひかりと愛といのち」
https://www.shogakukan.co.jp/digital/09D016170000d0000000

三浦光世『三浦綾子創作秘話』(小学館)

  『十勝岳爆発災害志』 については、光世著『三浦綾子創作秘話』(小学館)にも詳しい記述があります。 光世は 営林局に勤めていた頃、時に図書点検をすることがあり、「 妙に気になる分厚い一冊 」と出会います。その場面を本文から引用します。

 その図書の中に、妙に気になる分厚い一冊があった。広辞苑ほどの厚さで、「十勝岳爆発災害志」という本である。気になりながらも、当時私は遂にその一冊を開いてみることがなかった。これがのちに、妻綾子の作品「泥流地帯」の重要な参考文献の一つになるのだが、むろんそんな日が来ようとは、夢にも思わぬことであった。

三浦光世「泥流地帯」ーー苦難を人はどう受け止めるべきか( 小学館文庫 『三浦綾子創作秘話』より)

 ほかにもいろいろ興味深い記述が続きますが、長くなるので一旦このあたりで終わります。
 
 『三浦綾子創作秘話』は電子書籍でお読みになれます。
 小学館三浦光世電子選集
https://www.shogakukan.co.jp/digital/09D034500000d0000000

『泥流地帯』『続泥流地帯』は文庫本・電子書籍で、お読みになれます。文庫本は下記カートからもお求めになれます。

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