
7月28日に、旭川出身の映画監督・白石和彌さんと、作家の柚月裕子さんをお迎えした特別講義が勤務校で行われました。「日本映画論」という科目の最終日で、十分に感染対策を行ったうえで、私も参加させてもらいました。
https://www.yomiuri.co.jp/local/hokkaido/news/20210729-OYTNT50119/
(読売新聞北海道版、2021年7月30日付)
8月20日公開の新作『孤狼の血 LEVEL2』https://www.korou.jp/ 制作秘話など、
さまざまなお話をうかがえましたが、やはり気になるのは、旭川について。
白石監督は、旭川西高校のご出身。その下の学年に、『孤狼の血』シリーズにも出演している音尾琢真さん(TEAM NACS)がいたそうです。そう、われらが三浦文学館公式キャラクター・レイ(旭川西高校卒業という設定)は、白石監督と音尾さんの「後輩」にあたるのです!
白石監督が映画に興味を持ったのは、そんな旭川時代だったそうです。祖父母の食堂が旭川市内のバス停の近くにあり、場所がら、よく映画館からポスターを貼らせてほしいという依頼があったとか。ポスターを貼ると謝礼に招待券が2枚もらえたので、子どものころから家族と一緒に映画館に足を運んでいたそうです。
そして、音尾琢真さんがはじめて白石作品に出演したのは、北海道警察が舞台の『日本で一番悪い奴ら』(2016年)。以降、「白石組」の常連とも言える存在となり、味のある小市民役から、悪役(といっても、どこか憎めない)まで、幅広く演じておられます。
さて、「このミステリーがすごい!」大賞はじめ、大藪春彦賞、日本推理作家協会賞など数多くの賞を受賞されている柚月裕子さん。美しく凛と響きわたる声で、一瞬のうちに会場を魅了していました。
「孤狼の血」シリーズの2作目、『凶犬の眼』(角川文庫、2018年)https://www.kadokawa.co.jp/product/321908000080/
は、冒頭から旭川刑務所のシーンです。失礼を承知で、実際に足を運ばれたのかうかがったところ、「小説にとって重要な場所は、三度訪れます」と……!
ミステリー作家にとって、舞台となる場所は、説得力のためにもたいへん重要なもの。物語にふさわしい空気感を描き出すため、三度も訪れて確認されるのだそうです。
旭川刑務所へはレンタカーを借りて近くで駐め、その「場」の空気感をじっくりと確認されたとか。その後、旭山動物園を楽しみ、旭川のグルメも味わったそうです。柚月作品の魅力の1つに、その土地土地のグルメ描写もあるのですが、なるほど、実際にご当地で舌鼓をうった逸品を登場させているのですね。
柚木さんの長編ミステリ『盤上の向日葵』(中公文庫、2020年)も、“推し”の1つです。

将棋界を舞台とし、重要な土地として描かれたのは、山形県天童市。将棋駒の生産日本一の地で、三浦光世がその天童市で入手し、愛用した将棋盤は、三浦文学館でも展示しています。
登場人物一人ひとりに両親がおり、そして祖父母がおり、長い長い履歴があることを実感させる『盤上の向日葵』は、三浦文学ファンに親しみやすい感動作です。ぜひ、ご一読ください。
田中 綾