【案内人ブログ】No.57「十勝岳」が「日本ジオパーク」に新規認定 記:森敏雄

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美瑛・上富良野・新得にまたがる標高2077mの活火山「十勝岳」が本年1月28日「日本ジオパーク」に新規認定された。北海道では「三笠」、「とかち鹿追」、「洞爺湖有珠山」、「アポイ岳」、「白滝」に次ぐ6番目である。このうち、「三笠」及び「とかち鹿追」は今般再認定となった。
「ジオパーク」とは何か?「ジオパーク」とは地球・大地を意味するジオと、公園を意味するパークとを組み合わせた言葉で、「大地の公園」を意味する。地域社会の持続可能な発展を通じて、価値ある地球活動の痕跡を守り、そのまま未来に引き継いでいくことを目的とした国連機関ユネスコの正式事業である。4年に1回再審査・再認定を受ける仕組み。その際には適正や活動度がチェックされ、品質の維持と向上が求められる。本年1月現在、「日本ジオパーク」は全国46地域にある。そのうち9地域は「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されている。ちなみに、北海道からは「洞爺湖有珠山」と「アポイ岳」の2つが選ばれている。
目でみて分かる美しい景色、耳を使って聴く温泉の湧き出る音や鳥のさえずり、手を使って知る土や石の感触などなど、自分の五感をフル活用しジオパークの素晴らしさを全身で感じ取って貰いたいものである。

さて、「十勝岳」といえば活火山。噴火の実態は、1857年(安政4年)……安政噴火及び1887年(明治20年)……明治噴火(共に小噴火)を経た、1926年(大正15年)大爆発を起こし、死者144名発生という大惨事となった。いわゆる大正噴火である。三浦綾子さんはこのときの様子を小説『泥流地帯』『続泥流地帯』に著した。それから36年後の1962年(昭和37年)……62噴火、さらに26年後の1988年―1989年(昭和63年―64年)……88―89噴火を起こし、「30年周期説」が定説となっている。その意味で、30年以上経過した現在、いつ噴火があっても不思議ではない状況にあることを理解すべきである。現在の噴火警戒レベルは「1」(活火山であることに留意)だが、「2」「3」などへ急上昇することも覚悟しなければならないだろう。

十勝岳ジオパーク推進協議会が発行したパンフレットによると、ジオガイドとして6つのコースが用意されている。Aコース:十勝岳ものがたり1、Bコース:十勝岳ものがたり2、Cコース:火山と共生する美しい丘1、Dコース:火山と共生する美しい丘2、Eコース:泥流地帯を切り拓く、Fコース:森を歩き火山を知る。この中でEコース:泥流地帯を切り拓くがおすすめである。そのコースを順に辿ってみよう。

スタート地点は上富良野開拓記念館。三浦綾子さんの小説『泥流地帯』『続泥流地帯』の世界を垣間見ることができます。

1 上富良野町開拓歴史広場
草分地区にあり、大正噴火(泥流)の被災地。上富良野開拓記念館、草分神社、『泥流地帯』文学碑がある。富良野盆地の開拓は、1897年(明治30年)4月12日に、三重県から訪れた田中常次郎一行8名が「憩の楡」に到着したことに始まる。
上富良野開拓記念館は、1926年大正噴火(泥流)発生当時の村長・吉田貞次郎氏の住宅を解体復元したもので、泥流被害を受けながら残存した貴重な建築物である。館内には大正噴火(泥流)についての解説や、吉田村長の遺品などが展示されている。屋外には町内の工事現場でみつかった噴火(泥流)による流木が展示されている。
なお、『泥流地帯』文学碑の文字は綾子さんご自身が揮毫したものである。
2 十勝岳爆発記念碑の巨岩
1926年(大正15年)5月24日の大正噴火(泥流)で流されてきた巨岩(巨礫)そのもの。元々30m南西の道路縁にあったが、十勝岳爆発記念碑駐車場整備の際に、地中から抜き出し現在の場所に設置した。大きさは約3.7m、重さ約68トン。
記念碑はこの巨岩(巨礫)を台座として建てており、巨岩(巨礫)を台座とした唯一のものである。
3 旧日新尋常小学校跡
『泥流地帯』『続泥流地帯』の主人公、拓一・耕作兄弟のかよった小学校が日新尋常小学校である。小説では日新・・ではなく日進・・となっている。
1911年(明治44年)農家の子供たちのために、新井牧場内に「上富良野第四教育所」が開設された。1917年(大正6年)4月「日新尋常小学校」と改称された。
1926年5月24日噴火の時、十勝岳のまわりには雪が厚く積もっていた。火山の爆発によって山が崩れ、高温の水で雪が解け、土砂とともに流れ下った。校舎は全壊・流失。児童46名中11名が命を落とした。教師の菊池政美氏(小説では「菊川先生」)は検定試験受験のため旭川へ出かけていて難を免れた。菊池氏の家族4人(母、妹、妻、娘)は亡くなった。復旧は比較的早く、6月中旬4km離れた所に臨時校舎を建てて授業が再開された。
4 草分の大正泥流堆積物
噴火による泥流で被災地域の土層は次のような状態となっている。
〔上段〕農地復興のために入れられた土の層(客土)
〔中段〕大正泥流の地層(砂利を含んでいる)
〔下段〕農耕始まって以来30年間(1897~1926)の耕作土の層(黒土)
5 上富良野町開拓歴史広場

なお、このEコースの所要時間は2~3時間です。冬季は不可。お申し込みは十勝岳ジオパーク推進協議会。美瑛町:TEL0166-76-4004/上富良野町:TEL0167-45-6994まで

by 三浦文学案内人 森敏雄

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