【案内人ブログ】No.39

『塩狩峠』50年事業 三浦文学3つの道 フットパスマップ(ぶんまち-09) 事務局ブログ
『塩狩峠』50年事業 三浦文学3つの道 フットパスマップ(ぶんまち-09)

「氷点の道」を歩く

シルバーウィーク第2日目の9月20日(日)、思わぬ晴天となり、友人と二人で「氷点の道」を歩いた。当初、9月21日(月)「敬老の日」を予定していたのだが、その日の天気予報は「曇り」なので、急きょ1日早めてこれを実行した。
私たちは、朝10時、外国樹種見本林駐車場で待ち合わせをした。新型コロナウィルス感染予防のために二人ともマスクを着用した。まずは「風は全くない」に始まる『氷点』文学碑前で記念写真を撮った。

10時10分、ウォーキングスタート!昔、この駐車場辺りに池があったという話を聞いたことがあるが、真偽のほどは分からない。
○神楽農協(バス停)~ここから陽子は家出するためバスに乗って辰子のもとを訪ねた。
○神楽小学校~陽子はお遊戯会の衣装をあつらえてもらえなかった。
○神楽中学校跡~卒業式の答辞=陽子は白紙にすり替えられた原稿に驚くが、堂々と自分の意見を述べ満場の拍手を受ける。
○特定郵便局跡~局長は美瑛川の川原でルリ子の遺体を発見し、辻口家に知らせる。
○神楽本通り~バスに乗り遅れた啓造が歩いていると、由香子が声をかける。二人は歩いて病院へ。由香子、啓造から「もう少し離れて歩いてくれないか」と注意を受ける。由香子は樺太(サハリン)からの引き揚げ者であった。
○神楽町役場(神楽支所)跡~当時は神楽役場。啓造は陽子の出生届を出すのに躊躇する。
○神楽橋(忠別橋)とサムライ部落~忠別橋の両サイドには彫刻が計4本置かれている。旭川は彫刻の町でもある。陽子はバス車内からサムライ部落一戸からの赤いマフラーを目撃する。この一帯は現在忠別橋公園となっており、野外彫刻が数点配置されていた。サムライ部落というのは1920年代に出現し、60年後の昭和50年代後半に消失した。遊歩道の傍にはナナカマドが赤い実をつけ、ススキの穂が揺れていた。キリギリスの鳴き声があちこちで聞こえた。
○オオバボダイジュの下に上川神社発祥の地(宮下通りの語源)という碑が眼についた。この場所は義経台というアイヌ民族の集合場所で、高台を削って旭川駅が開かれた由。上川神社は現在神楽岡公園内に鎮座する。小説『氷点』は昭和21年7月21日夏祭りのひる下がり、即ち上川神社祭を念頭において、ここから様々な物語が展開されていくのだ。
○10時55分 旭川駅でトイレタイム。安田侃氏製作の「天秘」が堂々と立っていた。6年前、私は三浦綾子文学賞に拙作を応募した。初めての作家体験であった。ホワイトブロンズ像「天秘」に重要な使命を与えた。応募総数170点。ちなみに、この時の受賞作は河﨑秋子氏の『颶風の王』であった。

旭川駅内の東側コンコースでは、旭川市開村130年記念写真展のパネルが数枚並んでいた。旭川駅は明治31年7月16日開かれた。現在の駅舎は4代目、平成26年(2014年)建設されたことが解った。駅裏の北彩都ガーデンにはあちこちにピンクや白の萩が咲いていた。

旭川市の春光台一帯は、昔、萩ヶ丘と呼ばれていたとか。萩があちこちに咲き乱れていたのであろう、往年の春光台一帯に思いを馳せた。春光台といえば『道ありき』文学碑が建って6年経過した。
○アサヒビル武田生地部跡~徹が陽子の白い衣裳を取りに行くと、注文を受けていないことが発覚。夏枝、窮地に陥る。
○喫茶ちろる~夏枝と村井が密会する。
○4の8バス停~光世さん、「氷点」というタイトルを思いつく。
○旭川郵便局跡~光世さん、小説『氷点』の原稿を最終締切日に郵送する。12月31日消印有効。ここは私が3年半勤務した懐かしい職場であった。この場所は現在、OMO7ホテルとなった。
○11時35分 旭川六条教会~『氷点』で描かれた時は旧会堂で、外階段の造りだった。啓造、会場の中に入れず一人苦悩する。辰子の家もこの辺りにある設定。

○道立旭川東高~旭川中学校で前川正の母校。歩道沿いに宮沢賢治の「旭川」の碑があった。賢治は農事試験場で用務を終えた後、教え子の就職依頼で樺太(サハリン)に渡った。
○大成小学校跡~綾子さんが通った小学校。碑があった。
○4の16左2 生家跡~綾子さん生誕の地。建物はなく、民間駐車場となっていた。
○12時5分 おやきの富士屋で休憩タイム。
○9の12 堀田家跡~一棟二戸(かつて堀田家・前川家は1年間軒を連ねた)及び道路を挟んだ現在法律事務所(綾子さんはここから嫁に出た)。
○北海ホテル跡―辻薬局跡―三条食堂跡―冨貴堂本店跡―旭川駅―氷点橋―外国樹種見本林(ゴール)、時刻は13時35分を指していた。

所要時間は3時間30分ほどであった。「三浦文学3つの道フットパスマップ」によると、「氷点の道」はコース全長約8km(所要時間:約1時間40分)とあるが、アドベンチャーレーサー田中陽希クラスであれば楽々完遂であろうが、素人には難しいということが判明した。その後、近くのラーメン店で昼食をとり、杜のスパ神楽で入浴し汗を流した。この日は「敬老の日」スペシャルデーで入館料は半額の300円であった。ありがとう!友よ、付き合ってくれてありがとう!小説『氷点』を思い起こすよい機会となった。感謝、感激、そしてお疲れさまでした。

by三浦文学案内人 森敏雄

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