5月18日、第33回「人文学の挑戦」トークショーに登壇いたします。タイトルは、「『あたたかき日光(ひかげ)三浦綾子・光世物語』刊行記念トークショー:『氷点』と『笑点』――三浦綾子と落語!?」@紀伊國屋書店札幌本店。
特別ゲストは、この3月に真打昇進し、連日超多忙の落語家・林家つる子師匠 https://tsuruko.jp/ 。司会は、三浦綾子ファンでもいらっしゃるHTB北海道テレビアナウンサーの大野恵さん。とても素敵でぜいたくな機会で、緊張しつつ楽しみにしている毎日です。
次回、『笑点』好きだった三浦綾子・光世夫妻についてふれたいと思いますが、その前に、落語・講談について個人的なお話を少しだけ――。
私が落語会などに行くようになったのは、2人の友人のおかげです。
1人は、今回のイベントの共催「一般社団法人だるま十区」https://daruma-hiragishi.jp/daruma10q/ 代表理事の住出尊史さんで、中学からの友人です。住出さんは2013年、札幌の狸小路に常設演芸場をつくる会を立ち上げ、その奮闘ぶりは、北野麦酒さん『北海道落語事情 落語を愛し、夢を語る人びと』(彩流社、2015年)https://www.sairyusha.co.jp/book/b10014990.html に詳しく描かれています。
そして、もうお1人。同じ札幌で、主に落語芸術協会の方々が登壇する「福北寄席」
https://youtasnet.com/fukukitayose/ の企画に関わっている「株式会社ユータスネット」の溝手孝司さん。20代からの友人で、住出さんともその頃以来交友が続いています。
50代になった今、3人で飲むと落語や講談の話題になるのですが、20代のころにはそんな話に興ずる大人?になるとは思ってもいなかったので、しみじみ感慨深いです(ちなみに3人に共通するキーワードは「演劇」でした)。
ところで、落語の存在は、日本近代文学を学ぶときに欠かせないものです。近代文学ならではの文体=言文一致体は、そもそも明治期、三遊亭圓朝の落語を速記者が書き起こしたものから来ているので、日本の近代文学史は圓朝の落語から始まっているとも言えるのです。私もひととおり学び、研究室には『口演速記明治大正落語集成』全7巻も揃っています。
とはいえ、実のところ、寄席に行っても落語の醍醐味があまり味わえていなかった時期がありました。そんな中、講談師・神田京子さんの新作講談「金子みすゞ伝~明るいほうへ~」を聴き、はっと開眼しました。落語は、どちらかというと会話が主体ですが、講談は地の文で物語を読み進めていく話芸で、オチの代わりに大河ドラマ的な物語の筋を味わえます。私はたぶん、会話よりも地の文派(?)、笑いよりも物語性に関心があるので、講談や浪曲が好みなのだということに気づきました。以来、ラジオやyoutubeなどで講談などを楽しむようになっています。
さて、3月27日、林家つる子師匠の真打昇進披露興行を上野の鈴本演芸場で堪能してきました。その日の演目は、一番聴きたかった「芝浜」。つる子師匠は、これまで男性(魚屋の勝さん)視点で語られてきた「芝浜」を「おかみさん」を主人公にして語り直す、という大きな挑戦で注目されています。まさにその「芝浜」を目の前でたっぷり拝聴でき、感激しました。
文学で言えば、視点人物を変えて語り直すという手法であり、語り手(narrator)の役割を考えるうえでもたいへん興味深い試みです。おかみさんにはこんな過去があって、そういう出逢いがあって、そしてこういう結婚生活を過ごしていたのか……など、新鮮で、従来以上の感動を覚えました。
次回また、続きをご報告したいと思います。
おまけ・住出さん、溝手さんたちと「澄川狸の会」でも楽しんでいます! https://twitter.com/sumikawatanuki