【館長ブログ「綾歌」】三浦文学に登場する学生が読んだ本と、最近の学生が読んでいる本

「綾歌」館長ブログ

半年前の話題になりますが、2023年12月、「全国大学ビブリオバトル2023首都決戦」(@昭和女子大学)に、一観戦者として参加しました。配布された資料の中に、前年度の大会での発表本がリストアップされていたのですが、2022年度の大学全国大会と予選会で紹介された本は、このようなラインナップだったそうです(書名順)。

大学ビブリオバトルの人気紹介本リスト...2022年度
人を通して本を知る、本を通して人を知る――。そんなキャッチフレーズで、書評ゲーム「ビブリオバトル」は広まってきました。参加者が面白いと思う1冊の魅力を全力で語り、聴衆の投票で最も読みたくなった本が決

紹介回数 3回
(書名・著者・出版社の順)

多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。  Jam  サンクチュアリ出版

紹介回数 2回
(書名・著者・出版社の順)

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。  青柳碧人  双葉社
命売ります  三島由紀夫  集英社
イラストで読む奇想の画家たち  杉全美帆子  河出書房新社
うえから京都  篠友子  角川春樹事務所
俺ではない炎上  浅倉秋成  双葉社
かがみの孤城  辻村深月  ポプラ社
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  桜庭一樹  富士見書房
下町ロケット  池井戸潤  小学館
正欲  朝井リョウ  新潮社
そして、バトンは渡された  瀬尾まいこ  文藝春秋
タイタン  野﨑まど  講談社
腹を割ったら血が出るだけさ  住野よる  双葉社
BUTTER  柚木麻子  新潮社
犯人選挙  深水黎一郎  講談社
変な家  雨穴  飛鳥新社
まっぷたつの子爵  イタロ・カルヴィーノ  晶文社
もしも徳川家康が総理大臣になったら  眞邊明人  サンマーク出版
優しい死神の飼い方  知念実希人  光文社

「3回」紹介されたのは、ゲームグラフィックデザイナーでイラストレーター・Jamさんの『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』。愛らしい猫の4コマ漫画を通して、さまざまな不安や、傷つきやすい心への対処法を紹介した一冊です。精神科医の名越康文さんが監修していて、処方箋のような内容であることも人気だとか。
「ビブリオバトル」では小説の紹介も多いですが、SNS時代を象徴するような本も読まれていることがうかがえ、読書リストは、その時代を映す鏡のようにも感じます。

さて、三浦綾子の小説に登場する学生たちも、作中でさまざまな本を熱心に読んでいました。
大学生ではないですが、高校1年生の辻口陽子が読んでいたのは、カミュの『ペスト』(『氷点』「赤い花」)。高校3年生で、卒業式を終えたばかりの広野奈緒実が3日がかりで読んだのは、戦没学生の手記『きけ わだつみのこえ』と、原民喜の『夏の花』(『ひつじが丘』)でした。大学生で19歳の三木早苗は、古書店で岩淵辰雄の『軍閥の系譜』と住本利男の『占領秘録』を買い、日本の現代史を学ぼうとしていました(『石の森』三)。
こういった本が、2000年代の学生たちにも読まれているのか──気になるところです。

田中綾

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