『ちいろば先生物語』の読後感といえば、圧倒された、に尽きるでしょうか。榎本保郎牧師の生涯のダイナミックさ、劇的さ――「ちいろば」というかわいらしいタイトルとのギャップも、相乗効果になるようです。
榎本牧師が自伝「ちいろば」を連載したのは、愛媛県の日本基督教団今治教会の週報でした。2年間連載したのち、1975年に近江八幡市へと居を移しましたが、現在でも、今治市では「ちいろば」牧師の足跡は濃厚なのでしょう。
そんな、三浦文学ゆかりの愛媛県で、9月7日(土)に講演をさせていただくこととなりました。愛媛エルム会(北海道大学同窓会)の主催で、「短歌がつなぐ365日~歌人としての三浦綾子~」です。
https://sites.google.com/site/ehimeelm2016/10-information/10-1-2019seminar
主催の方々への感謝も込めて、三浦綾子の小説に登場する「北海道大学」をあらためて調べてみました。ご存じ、『氷点』『続氷点』、『ひつじが丘』などに登場していますね。とりわけ『続氷点』では、主要登場人物がほぼ北大生で、札幌の街並みも追体験できます。
辻口陽子(ヒロイン)
北大生 辻口啓造(父)
北大医学部卒 辻口 徹(兄)
北大医学部生 北原邦雄(徹の友人) 北大理学部生→院に進学
津川教授(陽子の祖父=夏枝の父) 北大医学部内科教授
注目すべきは風景描写。実際に、三浦夫妻は北大構内や植物園を取材し、臨場感を伝えています。
クラーク会館から、北に一キロほど伸びた真っすぐな舗装路には、絶えず自動車が走り、学生たちが行きかっていた。ここから見る北大構内の眺めが、陽子は一番すきだった。
舗装路の左手は農学部で、その北よりに黄土色の三階建の理学部が、大きなニレの木立ごしに見える。ニレの向こうに、ポプラが幾本か道に沿ってそびえている。
『続氷点』角川文庫版 下巻「新芽」p7
三浦文学を通じて、愛媛&北海道の文学散歩も楽しんでみませんか?
田中 綾