件名ついてお知らせします。
旭川市の市民団体「旭川の歴史的建物の保存を考える会」(軽部望会長)は、歴史的建造物を表彰する第24回建築賞として、綾子の小説『氷点』の辻口邸のモデルとなった藤田邸を選びました。詳細は以下の通り新聞に掲載されております。
「北海道新聞」朝刊 2021年4月3日 地域の話題14面
旭川・藤田邸に建築賞 昭和初期建造「氷点」主人公宅のモデル
藤田邸の写真は『「氷点」を旅する』『生きることゆるすこと 三浦綾子 新文学アルバム』などに収録されています。また、『遺された言葉』に藤田邸を辻口邸に決めた過程や取材の様子が記されていますので以下に引用します。
見本林の舞台は決まったが、家はなかなか決まらない。新町のあたりをうろついて、どこかふさわしい家はないかと考えた。なかなか、イメージにぴたりとした家はない。そしてある夜、ふっと思い出したのが、宮下二十二丁目の藤田旭山先生のお宅である。
初出:三浦綾子「小説の舞台とわたし」「旭川市民文芸」1973年10月号、のち三浦綾子『遺された言葉』講談社に収録。
このお宅は女学校時代、旭山先生の御令弟寅一先生に英語をならうため一夏通ったことがあり、のちに終戦の年、句会に伺ったこともある。
昭和五年、酒造会社を経営していた旭山先生の御父上が二万円で建てられたという家である。和洋館から成るその家は、いかにも病院経営者である辻口病院の先代が建てたにふさわしい家に、私には思われた。
思い立ったが吉日で、すぐに翌日お訪ねして、お家の中を見せていただいた。今年亡くなられた月女さんが、明るい笑顔で迎えて下さり親切に御案内下さった。間取を図に書き、そっくりそのまま小説につかった。
のちに挿絵の福田豊四郎、向井久万両先生をはじめ、テレビ、映画関係の人もお邪魔してご迷惑をかけたが、テレビにもこの家は再現された。