【館長ブログ「綾歌」】頌春 高倉健も愛読した、三浦綾子

「綾歌」館長ブログ

新年のご挨拶を申し上げます。

昨年は“禍福は糾える縄の如し”という言葉が思い浮かぶような一年でした。みなさまにとってはどのような一年だったでしょうか。

今年も、もちろんさまざまなことは起こるでしょうが、そんなときでも、読書や芸術鑑賞を通じて心をゆたかにしていきたいものです。

さて、年末年始は映画やDVD三昧という方もおられそうですね。名優で、独特な存在感を誇った高倉健といえば、どの映画を思い浮かべるでしょう。

東映時代の『網走番外地シリーズ』、独立以降の『幸福の黄色いハンカチ』、『南極物語』、『鉄道員(ぽっぽや)』はじめ、多くの出演作があります。個人的には『駅 STATION』が好きで、ほかにも『居酒屋兆治』が思い浮かびますが、その原作は、直木賞作家・山口瞳の小説でした。

ルポライター・谷充代さんの『高倉健の図書係 名優をつくった12冊』(角川新書、2024年)https://www.kadokawa.co.jp/product/322402001120/ によると、高倉健はたいへんな読書家だったそうです。前出の山口瞳作品はじめ、連城三紀彦の『螢草』や、山本周五郎の『樅ノ木は残った』、檀一雄の『火宅の人』、五木寛之『青春の門 第一部筑豊篇』など、小説に限らずエッセイ等、さまざまな本を撮影の合間に読んでいたとか。

気に入った本は繰り返し読んだそうで、その中に、三浦綾子の『塩狩峠』や『母』なども挙げられていました。

映画『網走番外地シリーズ』(1965~、石井輝男監督)の撮影中に層雲峡のホテル大雪に泊まっていた頃の話のようだ。ホテルのスタッフが撮影のない日に読んでください、と置いていった本の中に三浦綾子さんの一冊を見つけ、その後も自分が読みたいものは購入したと言う。

『高倉健の図書係 名優をつくった12冊』p56~57

あらためて高倉健のプロフィールを見ると、1931年、福岡県生まれ。筑豊炭田で知られる中間市出身で、戦後は父が炭鉱夫の取りまとめ役などをしていたそうです。三浦綾子も教員時代、炭鉱町であった歌志内市で生活していたことは、ちょっとした接点になるでしょうか。 2014年に83歳で亡くなった高倉健。昨年は没後10年でした。あらためて、その人間的な魅力を味わいたいですね。

田中綾

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