ぶんまちnews・file<4>
この一週間、ほとんど途切れることのない「熊本地震」被災のニュースと避難生活の様子。犠牲になられた方々の悲しみに思いを馳せると、自分がこのような災害に遭ったらどうするのだろう、と現実感に覆われる不安の毎日です。何よりも困難な被災生活を余儀なくされている皆様や亡くなられた方に心からお見舞い、お悔やみを申し上げたいと思います。
偶然にも、今年三浦文学館は、地域と連携した「文学でまちおこし」事業で十勝岳大正の大爆発から90年の節目にあたって現地上富良野町の皆さんとさまざまな事業に取り組んでいます。十勝岳の爆発は、大正15年5月24日の昼。季節でいうと丁度今の時季の1か月あとです。最近事業打合せなどで2,3か月の間に何回か現地に通い、そのたびに目の前に白雪に覆われた雄大な十勝岳が青空に映えるとても美しい自然の姿を眺めていました。そんな時に熊本地震の発生。十勝岳は90年前この白雪が爆発で流れ硫黄や溶岩と混じり溶かされ山間の谷間を泥流となって一瞬にして下り、開拓の村を呑み込みこみ144名もの犠牲を出したのです。その時の様子が隠れる「美しい」山は、いつ爆発するかわからない「恐ろしさ」が重なって「無気味」な山と強く思うようになりました。
三浦綾子は、『泥流地帯』を終え、ある新聞紙上での対談で「人間は自然を征服したつもりでいるが、自然はそんな小さなものでない」と言い、こうした災害に遭ったときに「苦難にもめげず、家族が励ましあい、助け合って生きていく」のが人間の一番大事なことと話しています。
『泥流地帯』は、綾子自身が泥流の流れた跡を山頂付近まで登り自らの目で見て臨場感あふれる爆発の姿を、また被害の様子は何度も多くの被災者のもとに足を運び詳細に聞いて小説に描います。
文学館の今回のまちおこし事業ではこの物語を特別展「『泥流地帯』『続泥流地帯』生きるをつなぐ」として4月29日~10月30日まで上富良野町内3か所で展示します。
自然と人間、生きるをつなぐことの意味、苦難に立ち向かう決意、ふる里の大切さ。
『泥流地帯』『続泥流地帯』は、熊本地震に直面しているこの時、何を訴えるのでしょうか。
さらに、三浦文学の研究者として、年に全国各地で200回にも及ぶ講演を続けている森下辰衛・三浦文学館特別研究員の講演も4月26日同町で開催され、深い話を聞くことができると思います。
□『泥流地帯』講演会
日時 2016年 4月26日(火) 午後6時
会場 上富良野町保健福祉総合センター かみん
参加料 無料
□特別展『泥流地帯』『続泥流地帯』 生きるをつなぐ
<会場と展示期間>
4月29日(金)―6月29日(火)
後藤純男美術館 観覧無料
7月 1日(金)―8月30日(火)
総合保健福祉センター 観覧無料
9月 1日(木)―10月31日(月)
土の館 観覧無料
※講演・展示とも主催は次のとおりです。
十勝岳まちづくり上富良野町実行委員会
三浦綾子記念文学館
北海道新聞社
朝日新聞北海道支社
NHK旭川放送局
(文責:松本道男)