『塩狩峠』50年 「三浦文学でまちおこし」(3)
それぞれのまちに、ワンフレーズでまちのイメージを印象づける「まちの代名詞」と言われるものがあります。
お役所が命名することは少ないのですが、その街に住む人たちがさまざまな活動や地域の特徴を伝え広めてできることが多いのが通例です。そう考えると、三浦綾子の小説『氷点』も旭川の代名詞の一つかもしれません。世界各地や全国から三浦文学ファンでなくても、『氷点』といえば旭川、を連想するからです。
一方、同じ三浦小説である『塩狩峠』『泥流地帯』は、名は知っていてもその舞台となった場所が和寒町や上富良野町であることを知らない人が多くいるのも事実です。
『塩狩峠』が50年目を迎えたこの時こそ。和寒のまちの代名詞として、「塩狩峠のまち・和寒」となると、いいですね。
「泥流地帯のまち・上富良野」「氷点のまち・旭川」と隣り合う3つのまちの代名詞に三浦小説の名がついているとしたら、全国にも稀有なこととして注目されるのではないでしょうか。
3年前、三浦綾子生誕90年記念講演が旭川市で開催されたとき、講演で作家の海堂尊さんは「旭川のまちにはいまも三浦文学が根付いている」と驚きを持って話しました。その証左としてあげたのは、JR旭川駅横の川の橋が市民公募で「氷点橋」と名付けられたことや橋から文学館までの道が「氷点通り」になっていることです。確かに…。旭川のまちは、つい最近でも「氷点地ビール」「氷点ラーメン」「氷点の菓子」「レストランなどでの氷点スィーツ」など、次々とあらたな「氷点」が顔を見せています。
地域にある文学館がいかに市民の活動と結びついて豊かな地域文化を育てていくかは大事なことです。そうした思いで、新しい年には『塩狩峠』『泥流地帯』『氷点』の舞台となった「まち」に3つの「小説の名を冠したフットパスコース」を作るなど、まちと小説の名前をぴったりとくっつける活動で、「まちの代名詞」をつくりたい!!のです。
(文責:松本道男)